紀尾井ホール室内管弦楽団 2019年度定期演奏会

2019年度定期演奏会

ホーネックを首席指揮者に迎えて3年目の節目となる2019年度は、彼が最も得意とするオーストリア・ドイツの作品をふんだんに並べ、紀尾井ホール室内管弦楽団(KCO)と共に積み上げてきた成果をたっぷりとお聴きいただきます。同時に奇数回に登場する2人の客演指揮者、鈴木雅明とリチャード・エガーによる捻りの利いたプログラムも聴き逃がせません。KCOにとって初演となるブラームスの交響曲第2番やシューマンのヴァイオリン協奏曲をはじめ、《プロメテウスの創造物》と《プルチネッラ》の両全曲版など、実演で接する機会が希少な作品も盛り込みました。ご注目ください。・2019年度定期演奏会パンフレット(PDF:3MB)

 



第116回定期演奏会 ホーネックのモーツァルト選集Ⅲ

2019年 4月5日(金)19時 4月6日(土)14時

[指揮・ヴァイオリン]ライナー・ホーネック
[曲目]<オール・モーツァルト・プログラム>
セレナーデ第6番ニ長調 KV239「セレナータ・ノットゥルナ」
交響曲第25番ト短調 KV183
セレナーデ第10番変ロ長調 KV361「グラン・パルティータ」
[発売]紀尾井友の会優先:2019年1月9日(水) 一般:1月12日(土)
ライナー・ホーネック
ライナー・ホーネック
©ヒダキトモコ
第116回の聴きどころ♪


2019年度の幕開けを飾る第116回定期演奏会の聴きどころは、何といってもモーツァルトです。
ウィーン・フィルのコンサートマスターを務める ライナー・ホーネックが選りすぐってお届けする紀尾井のモーツァルト選集、その第3回にあたるこの回は、これまでの同シリーズの中でも特にユニークなプログラムとなりました。弦楽器のみの《セレナータ・ノットゥルナ》、管楽器だけの《グラン・パルティータ》、そしてフルオーケストラによる交響曲第25番と、編成も響きも大きく異なり、通常滅多に組み合わされることのない3作品をまとめてお聴きいただきます。
映画がお好きな方ならば、『アマデウス』のオープニング・シークエンスでサリエリの叫び声を聞きつけた使用人が、彼の部屋の扉を開けた瞬間に飛び出してくるダイナミックな音楽が耳に焼き付いていることでしょう。
ショッキングともいえるあの劇的な音楽こそが交響曲第25番です。また、サリエリがモーツァルトの譜面を目にし、その瞬間に彼こそが神が選んだ音楽家であると理解したのだとうっとりと回想する場面がありましたが、そこで用いられていたのが《グラン・パルティータ》でした。
これら名シーンを忘れがたくしているのは、どちらもモーツァルトの音楽のキャラクターを見事に活かしていたためです。
映画がお好きな方も、音楽がお好きな方も、紀尾井ホール室内管弦楽団の透明度の高い演奏で、モーツァルトの作品が持つ明と暗・静と動などのさまざまな表情をお楽しみください。


第117回定期演奏会

2019年 6月21日(金)19時 6月22日(土)14時

[指揮]鈴木雅明
[ソプラノ]松井亜希[テノール]櫻田 亮[バリトン]与那城 敬
[曲目]

モーツァルト:交響曲第29番イ長調 KV201
バルトーク:弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽 Sz. 106, BB114
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「プルチネルラ」(全曲)

[発売]紀尾井友の会優先:2019年3月20日(水) 一般:3月23日(土)
鈴木雅明
鈴木雅明
©Marco Borggreve
松井亜希
松井亜希
櫻田 亮
櫻田 亮
©Ribaltaluce
与那城 敬
与那城 敬
©Kei Uesugi
第117回の聴きどころ♪

旧から新、新から旧、温故知新

「故きを温ねて新しきを知る」という言葉が論語にあります。第117回定期演奏会は、これを音楽で味わってみようというものです。
1曲目は今からさかのぼること244年の1774年に作曲されたモーツァルトの交響曲第29番。天才と称えられるモーツァルトですが、幼少期から各地を旅し、新旧さまざまな音楽を吸収しました。この交響曲もイタリア様式からウィーン風へと進化を感じさせるものです。

そこから一気に時代を跳び越え、2曲目は82年前の1936年に書かれたバルトークの《弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽》です。バルトークも故郷ハンガリーやルーマニアをフィールドワークし、古くから伝わる民謡を収集研究して、自分の作品に活かした作曲家でした。

ストラヴィンスキーは1920年に書いた《プルチネルラ》で、18世紀作品を素材に用い独特の世界を築きました。たおやかで美しく、そして懐かしく胸に届く旋律を活かしたまま、近代的な響きをまとわせ、時に切なく、時にユーモラスに(終わり直前のコントラバスとトロンボーンによる曲など、面白くて噴き出してしまうかも?)編み直しました。それぞれの楽器のソリスティックな扱いも多く、紀尾井ホール室内管弦楽団の各プレイヤーたちの妙技も光ります。とにかく楽しい作品です。


第118回定期演奏会 ミュトスとロゴスⅢ 未来を見抜く者

2019年 9月27日(金)19時 9月28日(土)14時

[指揮・ヴァイオリン]ライナー・ホーネック
[語り]西村まさ彦
[曲目]

J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲第2番ホ長調 BWV1042
メンデルスゾーン:弦楽のための交響曲第10番ロ短調 MWV N 10
ベートーヴェン:バレエ音楽「プロメテウスの創造物」(全曲・語り付き)Op. 43

[発売]紀尾井友の会優先:2019年5月29日(水) 一般:6月1日(土)
ライナー・ホーネック
ライナー・ホーネック
©ヒダキトモコ
西村まさ彦
西村まさ彦
第118回の聴きどころ♪


「未来を見抜く者」と題した『ミュトスとロゴス』シリーズ3度目の今回も、さまざまな角度からお楽しみいただけるだけでなく、紀尾井ホール室内管(KCO)の重要なマイルストーンとなるようなプログラムを組んでいます。

プログラムの最初は、バッハのヴァイオリン協奏曲第2番です。ウィーン・フィルの顔として知られるホーネックが、KCOの首席指揮者に就任した最初の記念公演で独奏を務めたのが《2つのヴァイオリンのための協奏曲》。続いて2年目のシーズンの終わりはヴァイオリン協奏曲第1番でした。今回はこれまでこのように進めてきたバッハのヴァイオリン協奏曲シリーズの完結編となります。バッハがお好きな方はもちろん、ウィーン情緒がこぼれ落ちるような、甘く柔らかなホーネックのヴァイオリン演奏のファンは聴き逃せません。

そのバッハの影響を受けたと言われるのが、2曲目のメンデルスゾーンの《弦楽のための交響曲第10番》です。バッハから学んだいわゆる「対位法」が駆使され、ヴァイオリンやヴィオラ、チェロたちがそれぞれ活き活きと主張し、立体的に絡み合いながら進んでいきます。そこに、爽やかさとロマンティックさ、さらには情熱を同居させたメンデルスゾーン特有の味わいが加わり、ワクワクするような心踊る作品となっています。KCOの優れた弦楽セクションだからこそ表現できる本作の魅力を存分にお楽しみください。

後半は、ベートーヴェンの2つしか存在しないバレエ音楽から、有名な《プロメテウスの創造物》。《英雄》交響曲の元ネタともなった本作から、KCOはこれまでに数回、この作品の序曲を採り上げています。紀尾井のファンの方でしたら、2009年12月公演をライヴ収録したアントン・ナヌートとのディスクを思い出されるかもしれません。しかし、今回はなんとKCO初演となる全曲版でお贈りします。第2幕の〈パストラーレ〉や終わり近くの〈アンダンテ〉をはじめ、木管陣のソロやアンサンブルの醍醐味が満載で、フィナーレには有名なエロイカ旋律が登場するなど、しみじみとした味わいとダイナミックなベートーヴェンらしさがめくるめく登場する音楽です。今回はそこに、ベートーヴェン研究者との協働で、失われた台本を諸史料をもとに再現。さらに語りには人気俳優で、《こうもり》や《フィデリオ》など、オペラ出演もある西村まさ彦さんをお招きするという盛り沢山ぶりです。


第119回定期演奏会

2019年 11月8日(金)19時 11月9日(土)14時

[指揮]リチャード・エガー
[ヴァイオリン]佐藤俊介
[曲目]

シューマン:歌劇「ゲノフェーファ」序曲 Op. 81
シューマン:ヴァイオリン協奏曲ニ短調 WoO 23
ブラームス:交響曲第2番ニ長調 Op. 73

[発売]紀尾井友の会優先:2019年7月3日(水) 一般:7月6日(土)
リチャード・エガー
リチャード・エガー
©Marco Borggreve
佐藤俊介
佐藤俊介
©Yat Ho Tsang
第119回の聴きどころ♪


第119回もKCOのチャレンジは続きます。この回は3曲すべてKCOにとって初演となる作品を揃えました。

まずはシューマンが唯一完成させたオペラである《ゲノフェーファ》から、その序曲です。タイトルの“ゲノフェーファ”とは領主ジークフリートの妻で、物語のヒロインの名前です。オペラの筋書きは、彼女に横恋慕した従者ゴーロの恨みを買い、ゲノフェーファは策略の果て死罪になりかけますが、最後には駆けつけたジークフリートに救われ、民衆にも祝福されるというもの。序曲はこのストーリーを表すように、陰りを帯びた曲想に始まり、熱い高揚の果てに最後には凱歌のように輝かしく晴れやかに終結します。

2曲目はシューマンのほぼ最後の作品となったヴァイオリン協奏曲。堂々とした第1楽章ではシューマンのロマンと苦悩が歌い込まれ、チェロの甘美なソロに始まる第2楽章には後にシューマンが「精霊が教えてくれた」と語った旋律が用いられています。
フィナーレはポロネーズのスタイル。聴く側の楽しさとは裏腹に、全編駆け巡るパッセージは、ヴァイオリニストにとってこの上なく演奏困難です。また本作は素晴らしい名曲にもかかわらず、さまざまな思惑が絡み合って長い間秘曲とされ、初演は作曲から80年を経た1937年、なんと20世紀に入ってからでした。しかし、その後クレーメルやツェートマイヤー、テツラフ、イザベル・ファウスト、コパチンスカヤ、イブラギモヴァ、岡山潔などの才気溢れるヴァイオリニストたちがこの作品の価値に目覚め、普及に努めてくれたおかげで、その魅力がを広く認められるようになってきました。今回、このコンチェルトの独奏を務めるのはKCO初登場となる佐藤俊介。近年ピリオド界の第一人者として引く手あまたの彼ですが、もともとはモダンの世界できわめて高く評価されてきた名手です。彼もまた本作のポテンシャルを存分に引き出してくれるに違いありません。

後半はブラームスの交響曲第2番です。作品自体はとても有名ですが、テューバが入るなど編成が少し大きいため、これまで採りあげることなくきていました。今回は満を持してのプログラミングというわけです。歴史を紐解いてみると、ブラームスが自身で指揮した際のオーケストラ・メンバーは、第1交響曲が46名、第4番が49名ほどでした。これに照らし合わせると、第2交響曲は管楽器と打楽器で19名ですので、弦楽器は30名弱、すなわち紀尾井ホール室内管弦楽団の編成とほぼ同じ人数となります。したがって、楽器の性能の変化を別とすれば、今回はブラームスが本来想定していたサイズで作品をお聴きいただける貴重な機会ということになります。日頃80名の大編成で聴いているのとは異なる新鮮な響きと造形をご体験ください。

指揮台には、つい先ごろ、英国のセント・ポール室内管弦楽団の音楽監督とハーグ・レジデンティ管弦楽団の首席客演指揮者に2019年から就任することが発表されたリチャード・エガーが、3年ぶりに再登壇します。


第120回定期演奏会

2020年 2月14日(金)19時 2月15日(土)14時

[指揮・ヴァイオリン]ライナー・ホーネック
[曲目]<オール・ベートーヴェン・プログラム>
ヴァイオリン協奏曲ニ長調 Op. 61
交響曲第7番イ長調 Op. 92
[発売]紀尾井友の会優先:2019年10月30日(水) 一般:11月2日(土)
ライナー・ホーネック
ライナー・ホーネック
©ヒダキトモコ
第120回の聴きどころ♪


KCOの2019年度、そしてホーネックの首席指揮者としての任期3年目の掉尾を飾るのは、お馴染みのベートーヴェンです。毎回少し珍しい作品を入れ、ちょっと捻った内容で組まれた19年度プログラムですが、最終回となる第120回定期演奏会は、打って変わって王道中の王道・定番中の定番でお贈りします。
ベートーヴェンで「120」といえば、《ディアベリ変奏曲》ですが、KCOの第120回定期は、ヴァイオリン協奏曲と交響曲第7番。これらは初回の第116回と同じく、特定の原作(ストーリー)を持たない、いわゆる純音楽的作品のみによるプログラムでもあります。ベートーヴェン中期の大傑作であるこの2作品は、ともにウィーンで書かれ、初演されました。

ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は“ヴァイオリン協奏曲の王”と称えられる、傑作中の傑作です。この作品はとてもユニークなことに、第1楽章冒頭のオーボエのソロや第2楽章のしみじみとした弦楽器の歌など、オーケストラには素敵なメロディがあるものの、実はソロ・ヴァイオリンにはメロディらしいメロディはほとんどありません。しかし、デコラティヴなパッセージを紡ぎながら、音楽の世界へと深く引き込んでゆく圧倒的な求心力を持っています。また、第2楽章の特に終わり近く(カデンツァ前)での高音のつややかな響きなど、うっとりするほどヴァイオリンの魅力を感じさせてくれもします。
「協奏曲」という用語は、イタリア語の「調和する」という語に由来しますが、これまでに何度も共演を重ねているホーネックとKCOですので、まさに両者の「調和」をお聴きいただけると思います。ベートーヴェンは本作をアン・デア・ウィーン劇場の音楽監督であったフランツ・クレメントを想定し作曲し、初演も彼が行いました。オーケストラの指揮者兼コンサートマスターがソロを弾いたというのは、ホーネックと同じですね。

交響曲第7番は、もう説明の必要はないかもしれません。交響曲第5番と並び、本作も執拗なまでのリズムの展開を特徴とするエネルギーに満ち溢れた作品です(ヴァイオリン協奏曲も冒頭のティンパニのトントントントンというリズムが全体を支配しています)。緩徐楽章である第2楽章さえも長短短長長のリズム(韻脚・モード)に乗って、展開されています。
リストが「リズムのアポテオーズ(神化)」、ワーグナーが「舞踏のアポテオーズ」と称えたのは本当に言いえて妙ですね。とにかく曲が進むにつれ昂揚し、フィナーレが終わった瞬間には最高に気分がハイになるはずです。
ホーネックとKCOのコラボレイションの集大成となるこの公演。忘れがたいコンサートになるに違いありません。ぜひとも会場にいらしてください。

※出演者・曲目・演奏順は予告なく変更となる場合があります。予めご了承ください。

各種チケットのご案内

 

●2019年度 定期会員 料金<全5回分>
S席 26,000円 A席 21,000円 B席 14,000円

【新規会員募集】2018年11月1日(木)●紀尾井ホールウェブチケット・午前0時~/●電話・午前10時~

※全5公演共同一の曜日(金曜日19時/土曜日14時)に同一のお座席でご鑑賞いただけます。

※定期会員限定の特典も多数ご用意。詳しくは定期会員のご案内ページをご覧ください。

 

●セレクト3 料金<3公演券>(S席・A席のみ)
S席 16,200円 A席 13,200円

※第116回~第120回の定期演奏会の中から、お好きな3回を1公演ずつ選べるチケットです。

【発売】紀尾井友の会優先:2018年12月12日(水) 一般:12月15日(土)
優先・一般発売ともに●紀尾井ホールウェブチケット・午前0時~/●電話・午前10時~

●各公演 料金<単券>
S席 6,300円 A席 5,250円 B席 3,650円 *U29-A席 2,000円 U29-B席 1,500円

U29は公演当日に29歳以下の方ならどなたでもご利用いただけるチケットです。

2019年度定期会員・セレクト3の詳細・お申込みはこちら

開館25周年記念演奏会 トレヴァー・ピノックのモーツァルト「レクイエム」

紀尾井ホール開館20周年記念公演に来演し、その翌年にも登場してくれたピノックが、今度は25周年のドアを開けるために再び戻ってきます。プログラムはピノックのKSTデビュー時以来、8年ぶりとなるモーツァルト。

 

2020年 2月8日(土)14時 2月9日(日)14時

[指揮]トレヴァー・ピノック
[曲目]<オール・モーツァルト・プログラム>
交響曲第40番ト短調 KV550
アヴェ・ヴェルム・コルプス KV618
レクイエム KV626
[発売]紀尾井友の会優先:2019年9月18日(水) 一般:9月21日(土)
トレヴァー・ピノック
トレヴァー・ピノック
©Peer Lindgreen