藤舎呂英さん(邦楽囃子方)
「これからも新しい音楽を創造していきたい。」

このコーナーでは、旬の演奏家にご登場いただき、その人となり、邦楽との出会い、魅力などをお聞きしていきます。
第3回は邦楽囃子方の藤舎呂英さんです。

 

藤舎呂英

―――楽器を始められたのはいつごろですか。

 小学2年生の時、「新鼓会」と言う囃子方の演奏会出演のため稽古を始めましたが、実は祖父より新しい自転車を買ってあげるから…と言われ、モノにつられただけでした。
 それからはぷっつり和楽器に全く触らないまま高校時代はロック漬け。ヘビメタでギターを弾いていました。メカいじりも好きで自動車工学に興味があったのですが、高2のとき進路希望欄に「家業を継ぐ」と書いてしまったことから親に連絡がいき…そこからですね。猛稽古して大学に入り、現在に至っています。

―――自由な教育方針のもとで自ら選び取られたのですね。

 そうですね。家では祖母が三味線を弾いていましたし、祖父、父も囃子方で常に邦楽の音に囲まれる環境にはありましたね。体のどこかでいつかこの道に進むのだろうなと感じていたのかもしれません。

―――お囃子とはどんなものでしょう。初心者に話すとしたら?

 笛、小鼓、大鼓、太鼓の四拍子と、その他仏具など、打楽器から構成されます。笛だけは専門の演奏家が担当しますが、あとはすべて修得します。それから楽器に様々な特徴があります。小鼓の胴は江戸時代に作られたものが多く、新たに作ることの難しい貴重品です(私の胴は安土桃山のもの)。
 皮(小鼓、大鼓は馬、太鼓は牛)は表側と裏側の相性がとても難しく、まるでカップルのようです。家には100枚程の皮がありますが、ベストの組み合わせを見つけるのは至難の技です(笑)しかも鳴るまでに10年。私の皮は50年のもの!

―――お囃子を習いたい人はどうすれば?

 やってみたいと思ったらまずは人を訪ねたら良いと思います。インターネット等、情報もありますが、どなたか邦楽演奏家からのご紹介をお勧めいたします。
 経験は一切関係なく、今まで邦楽そのものにご縁のない方でも趣味としてもお楽しみいただけます。また、プロになれた弟子もいるんですよ!一人は私が以前、講師をしていた大学のシンガーソングライター志望の生徒でしたが、授業で教えて以来お囃子方を目指し、現在プロとして活躍中。もう一人は慶大(バスケ部)出身でお囃子に興味を持ち、今年芸大に入学したところです。お囃子は楽しいですよ♪

―――最後にお囃子のアピールを是非!

 圧倒される楽器の音色、人の発する掛声の響き、音のない無音という空間、このひとときを感じて味わっていただきたいと思います。

藤舎呂英

藤舎呂英(とうしゃろえい)
大阪府生まれ。父は藤舎呂浩。宗家藤舎せい子に師事し、没後六世家元藤舎呂船に師事。東京芸術大学音楽学部卒業。現在、放送・舞台(舞踊公演・長唄演奏会等)・海外公演等、幅広く音楽活動を行う。2006年第10回日本伝統文化振興財団賞受賞(同時にCD発売)。現在、藤舎流真しほ会、青濤会同人。いしかわ子ども邦楽アンサンブル講師。

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